データドリブンマーケティングとは、様々な局面に対して、データ主導でマーケティングが行われる方法のことです。データが何よりも大事なものであり、データによりマーケティングが進行していきます。
ただし、マーケティングと普段関わっている方々からは、従来のマーケティングとどう違うのかよくわからないという声もよく聞こえてきます。
データドリブンマーケティングは、最近とても流行っている言葉であり、言葉自体が先行してしまっているようなところもあり、その本質が正しく理解されているかと言えば、そうとも言えない部分があります。
ダイレクトマーケティングが主体のDMや通販は、昔からデータドリブンマーケティングをおこなってきました。
今回は、従来行われているマーケティングとデータドリブンマーケティングの違いを明確にするこからはじめてみましょう。
データドリブンマーケティングの本質を知りたいと思っている方々は、是非ご一読ください。
目次
データドリブンマーケティングの意味
「データドリブン」という言葉自体、今まで決して身近とは言えないやや難解な言葉です。訳せば「データ駆動」という意味合いであり、本来、コンピューターサイエンスで使用されていたような言葉です。データドリブンは、ひとつの計算によってデータが生成され、そのデータが次の計算を起動する原動力となり、連続する計算モデルです。
データドリブンマーケティングの出発点は、「データ」です。データ以外のものは、駆動力となることはありません。
データ以外のものに何があるのかと言えば、
・アイデア
・直感
・経験値
あたりのことです。
従来のマーケティングと、データドリブンマーケティングの違いは?
データドリブンの反対語には、「デマンドドリブン」があります。デマンドドリブンは、「要求駆動」などと訳されることがあります。データドリブンがデータより出発するものであり、デマンドドリブンは、要求が出発点です。
たとえば、アイデアを出発点として、そのアイデアの実行価値があるか検証するためにデータ分析をするのであれば、それはデマンドドリブンマーケティングと言えます。データ分析の駆動となっているのは、データではなく、アイデアを検証するという「要求」ということになります。
データドリブンマーケティングは、あくまでもデータが主導となり、意思決定が行われていきます。マーケティングを行ううえで、依存すべきものはいつもデータです。まさにそこには、データの価値を信用する企業体質が要求されることになります。
データドリブンマーケティングはただデータを分析すればいい?
ただ、企業がデータ重視にマーケティングを行えば、データドリブンマーケティングだと言っていいのでしょうか?そうではなく、大事なのはデータが駆動されていることです。
企業でよく行われているA/Bテストは、データドリブンマーケティングだと思っている方々も多いことでしょう。しかし、データ駆動という意味合いでは、A/Bテストはデータドリブンマーケティングではありません。
A/Bテストにはあらかじめ、AとBのどっちの効果が高いか追求したい……と言った要求が存在しているからです。
一方で、ユーザーの生の声をデータとして集めて、そこから洞察する分析であれば、データドリブンマーケティングということができます。
データドリブンマーケティングで何が変わる?
果たしてデータドリブンマーケティングで企業はどう変わるのでしょうか?また、今まで行っていたマーケティングは役に立たないと言うのでしょうか?
実際問題、アイデア主導のデマンドドリブンでも、欠陥的問題がある訳ではありません。アイデアが出発点であったとしても、試行錯誤を繰り返した結果、正しい答えを導き出すことができるかもしれません。
アイデア主導では時間がかかる
しかし、アイデア主導のマーケティングでは時間がかかりすぎるという問題点があります。よっぽどの天才肌の方々が発想するアイデアであれば、データより勝ることがあるのかもしれませんが。ほとんどの場合は、その可能性はありません。なぜなら、現実的未来自体がデータとして表現されるからです。
そこで現在の企業が求められているのは、様々な予兆を、データとしていち早く察知することです。
感情に浸る無駄な時間を消せる
データドリブンマーケティングの立場から言えば、意思決定を行ううえで、感情に浸ることは程無駄なことはありません。なのに、とかく企業は、マーケティングという名のもとでそれをしてしまっていることでしょう。あえて、感情とは、意思決定を邪魔してしまう要素です。企業で起こりうる感情とは、
・自社社員や取引先への愛着感
・長年行った施策への慣れ親しみ
・できるだけ損をしたくない思い
・個人感情
・顧客の好き嫌い
……などです。
企業を長く運営していると、そのようなものがどうしても累積して、それらのものに縛られ融通が利かなくなってしまうものです。人間らしい企業という言い方もできるのかもしれませんが、それは残念ながら意思決定を遅らせてしまう要素です。
感情が出発点であるからこそ、どうしても都度、感情に聞き耳をたててふり回されてしまうことがあります。しかし、データドリブンマーケティングを重視すれば、そのようなこともなくレベルの高い意思決定を行うことができるでしょう。
データドリブンを重視したマーケティングを行うことで、結果、ROI(投資利益率)を大きく向上させることができます。レベルの高い意思決定こそが、企業に利益をもたらすことになります。
従来行っているマーケティングの方法では、出発点はマーケターの推論がベースとなって商品の開発であったり、サービスの提供が行われていました。
データドリブンマーケティングはそうではなく、データという事実に従います。推論が邪魔をしないから、顧客が求める利益を、必要とするタイミングで、必要な人へと届けることができます。
企業は、データドリブンマーケティングを取り入れることで、企業にとって都合のいいターゲット選びをするのではなく、お客様ひとりひとりのニーズをキャッチした「パーソナライズ」を行うことができるようになります。
企業がマーケティングを単に行っているという自己満足から卒業することができ、その分だけお客様には実益がもたらされることになります。
顧客へのアプローチが変わってくる
データドリブンマーケティングを取り入れることで、顧客に対してのアプローチの仕方が変わってきます。データドリブンマーケティングをどうはじめればいい?
ここでは、データドリブンマーケティングをどうスタートさせればいいか解説をします。企業の価値観を変える
何よりも最初にしなければならないのは、それぞれ企業で仕事をしている方々が、データに価値が存在していることを信じることです。そうでないと、昔からの感覚によってすぐに従来のマーケティングの方法に戻ってしまうことでしょう。ですから、データドリブンマーケティングを行うリーダーは、昔よりの考えに戻ってしまう古いタイプの人間よりも、新世代の若い人材をつけた方がいいかもしれません。リーダーが、すぐに直感に傾倒してしまうようであれば、なかなかデータドリブンマーケティングは成功できません。
また、企業も組織全体に対して、データドリブンマーケティングを行う共有認識をさせる必要があります。
指標の決定
得てしてデータドリブンマーケティングをスタートするのはそれ程難しくはないのかもしれません。なぜならデータと言えば、いくらでも無尽蔵に存在しているからです。しかし、直感を排除してそのようなデータに依存すれば、データドリブンマーケティングであるのかと言えばそれも違います。
データが無尽蔵に存在しているからこそ、重要な指標を決定しておく必要があります。
データの導き方の方法として、以下を活用するといいでしょう。
マーク・ジェフリー著の『データ・ドリブン・マーケティング 最低限知っておくべき15の指標』を参考にしました。
・ブランド認知率
・試乗・お試し
・解約率
・顧客満足度
・オファー応諾率
・利益
・正味現在価値(NPV:Net Present Value)
・内部収益率(IRR:Internal Rateof Return)
・投資回収期間
・顧客生涯価値(CLTV:Customer Lifetime Value)
・クリック単価(CPC:Costper Click)
・トランザクションコンバージョン率(TCR:Transaction Conversion Rate)
・広告費用対効果(ROAS:Returnon Ad Dollars Spent)
・直帰率
・口コミ増幅係数(WOM:Word of Mouth)
参照:データ・ドリブン・マーケティング 最低限知っておくべき15の指標
データを分析
次に行うのは、収集したデータを分析しやすいよう加工する作業です。可視化の作業には、膨大なデータ処理を人手だけで行うのはあまり現実的ではないためツールが必要です。
データドリブンで使用するツールとしては、
・CRMツール
・CDPツール
・MAツール
・Web解析ツール
・BIツール
・SFAツール
などをあげることができます。
データを活用
テーマに基づき分析、解析処理を加えた結果、「課題」、「仮説」、「施策」などを見いだし、実際のマーケティング施策立案であったり、行動計画策定に役立ててみましょう。このようなデータ処理作業を自社で行うためには、分析力と、分析したものから有用な要素を導き出すスキルやノウハウが要求されます。これら作業を担う役割の人材が、データサイエンティスト、また、データアナリストです。
・データベースの運用
・データ処理
・分析スキル
・統計の知識
などにプラスα、要求される業務内容に応じ適切な結論、サジェスチョンを導き出すために、ビジネスやマーケティングの知識も必要となります。
自社にそのような専門スキルを持つ人材が既にいればいいのですが。いない場合、時間をかけて自社で育成する必要も出てくるでしょう。
データサイエンティストたちが、具体的なアクションプランを考案します。出来上がったプランを広告や宣伝など活用し、現実のマーケティング活動に反映させます。
さらに、プランを実行した結果を測定し、さらにPDCA (Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善))を循環させ、改善を進めていきます。
まとめ
いかがでしょうか。今回は、データドリブンマーケティングについて解説しました。現代の多様化した顧客のニーズをキャッチし、企業に利益をもたらすためには、データドリブンマーケティングへの変革が要求されています。
まずは、デマンドドリブンマーケティングとの違いを理解することからはじめてみましょう。
最初のころは、すぐに従来のマーケティングに戻ってしまうこともあるため、ブレないで徹底的に行うことが大切です。
データドリブンマーケティングを導入すると決めれば、有料ツールやITインフラを整備することよりも優先して、人材確保・人材育成を行うようにしましょう。
また、データドリブンマーケティングを頑張って行うつもりでいても、どうしてもデマンドドリブンが生まれてしまうときがあります。そのようなときにどうしても排除しようとストレスをためてしまうことよりも、もっとデータドリブンを増やそうという意識に傾倒した方がいいでしょう。
あらゆる意思決定をデータドリブンでしなければデータドリブンではないのは事実なのですが、定着する前に挫折しない対策も必要です。