

続きの続き 【ご相談内容】
洋服の赤坂の社長さん、マック青山さんからのご相談です。
店舗の改装特別セールを開催するのでお得意さんに案内DMを出したい。
初めてのDMなのでイチからアドバイスしてほしい。
モモちゃん:「♪どうしてお腹がへるのかな♪お仕事してるとへるのかな♪」 課長、そろそろお昼いきませんかー?


小野口課長:「♪時間を止めてもへるのかな♪」
「♪おなかと背中が……ぜんぜんくっついてない~」


現在、前々回と同じ11時15分のまま1秒も進んでないんだからね。
では、早く終わらせる方向で頑張りましょう! えーと、次は印刷工程でしたね。


じゃあ、まず印刷の工程をおさらいしておこう。
はい。前回までのようにDMを企画して、デザインが完成したら、いよいよ入稿です。

(印刷の工程)
- データ入稿
- 製版
- 色校正・初校出し
- 色校正の確認〜修正と戻し
- 再校出し
- 再校の確認〜戻し〜 校了
- 下版 〜 刷版
- 印刷
- 断裁〜加工
このようにDMの印刷物が完成したら、次は封入してDMリストの宛先へ発送します。


今回はDMの印刷工程で気をつけることを考えてみよう。入稿から加工が完了するまでに、だいたいどれくらいの日数が必要かな?
えーと。入稿から印刷物の完成までの目安は、だいたい2~3週間くらいでしょうか?


そうだね。でも、印刷物の仕様やアイテム数によっても違うよね。
はい。ハガキDMとパンフレット入りDMやカタログを入れた大型DMなどでは、印刷日数がだいぶ違います。


DM印刷物の中でも、思いのほか時間のかかるアイテムがあるけど、なんだろう?
うーん、カタログですか? ページが多ければカタログだけのスケジュールを組まないといけませんよね。


うん。ハガキやチラシの1枚物より時間がかかるから、しっかり印刷スケジュールを確認しておく必要があるね。でも、もう一つあるんだよ。
え、まだあるんですか……わかりません。


封筒の仕様によっては加工だけで10日ほどかかることがあるんだ。封筒印刷には大きく2つあって、ひとつは出来上がった封筒に印刷する”既製封筒への刷込み”と、もう一つはオリジナルの封筒を自由にデザインして組み立てる”別製封筒”。これは加工工程でプラス1週間くらい必要なんだよ。
でも、別製封筒って、そんなに時間がかかって費用もかかるわけだし、やらない方がよくないですか?


うん。たしかにコストとスピードなら刷込み封筒がお手軽だけど、既存の封筒しか使えないし、印刷領域やデザインに成約もあるから、あまり凝ったデザインはできないんだ。一方、別製封筒は紙質を選ぶこともできるしデザインが自由だから、手にとったときの印象を重視したければ別製封筒だよね。
なるほど。DMが届いた時のデザイン効果を考えて封筒の仕様も検討するんですね。それ次第で予算とスケジュールも変わってきますね。


たとえば販売促進などのお祭り風のDMならデザイン重視の別製封筒で、アンケート調査など公式書簡風なら既製封筒のように使い分けるといいんじゃないかな。
使い分けのポイントはデザイン、というわけですね。


さあ、いよいよ入稿だよ。企画から始まった長い道のりだったね。
思い返せば企画1年、デザイン、コピーも苦節1年。晴れて入稿です。


それだと、キャンペーンは終わってるけどね……入稿のときには何をするのかな?
はい。それぞれのツールの紙質を決定して、入稿用データの受け渡しをします。


そうだね。挨拶状には上質紙がよく使われるし、チラシやハガキならマットコート紙が一般的だね。他にも色々な種類があるから、実際に用紙サンプルを見て選んだ方がいいね。じゃあ、入稿データ受け渡しのポイントは?
コピーやデザインに間違いがないかよく確認して、入稿データにプリントアウトをつけて渡すのがいいと思います。


うん、それが確実だね。ただ最近は入稿データをメールやファイルのアーカイブで受け渡しすることも多くなってるよね。あらかじめ入稿データの仕様は印刷会社に確認しておこう。間違いのないデザインデータを入稿すれば、色校正で修正がなくなって時間とコストの節約になるからね。

さて、入稿したあとに始まる「製版」ってなんだろう。
はい。印刷物は4色のインクを重ね刷りしてカラー印刷を表現します。その1色ずつのハンコ(刷版)の元になるのが製版フィルムです。デザインデータが入稿されると、印刷工程の最初にこの製版フィルムが作られます。


そうだね。技術的なことは置いといて、このとき発注側として気をつけることは何かな?
えーと、データを入稿するときにデータの仕様を間違えないようにすることでしょうか。


例えば?
解像度の低い写真を渡してしまったり、入稿データのファイル形式が違っていたりとか……ですか?


単純なミスだけど、印刷データとしてWEB用の写真データを使ったりするとガタガタした粗い画像が印刷されちゃうよね。
せっかくの美人も粗い写真ではキレイに見えませんからね。


さて、製版が完了したら実際に試し刷りして印刷状態をチェックします。
色校正ですね! 1回目の色校正が「初校」、2回目が「再校」、3回目なら「三校」です。


そのときに、実際の紙にインクで試し刷りをする「本機校正」と、製版データからデジタル出力する「簡易校正(コンセンサス)」という2つのやり方があるんだよ。
その2つは、何が違うんですか?


簡易校正は短時間ですごくキレイに出力されるけど実際のインクでは刷らないので、紙にインクがのって染み込んだときの色味とは若干違うんだよ。色の再現性を重視する場合は本紙を使って色校正を出してもらう方が仕上りに近いんだ。
写真や色味が厳密でない場合は簡易校正でもオーケー、ということですね。


そう、時間優先ならば簡易校正の方が早いからね。では、色校正では何を確認するのかな?
実際に印刷物になったとき、希望通りのデザインや色調に仕上がっているかどうかを確認します。


色調が薄かったり濃すぎたり、商品や人物の写真がキレイに再現されているかなどをチェックして、想定と違う場合にはデータを修正したり、製版で調整したりするんだね。万が一、文字原稿の間違いを見つけたら、色校正ならまだ修正できるから、全体に間違いがないかよくチェックして修正が必要なときは、校正紙に赤字で修正箇所を指示して修正したデータと一緒に戻そうね。
色校正ならまだ訂正ができるんですね。


だけど、人物写真の表情が強ばっていても、「笑わせる」みたいな赤字は印刷工程では修正できないから気をつけてね。

お料理を「美味しそうに」する、というのはどうですか?


できません。美味しそうに写真を撮らなくちゃムリ。

商品を「高級そうに」というのは出来ますよね。


そういう抽象的な修正も、できません。

じゃあ、わたしの写真を「アン・ハサウェイみたいに」というのは大丈夫ですよね。


モモちゃん。ひょっとして、ふざけてる?
わたし的には似てると思うんですよ~。


そして、色校正のチェックが済んで、もう直しはないから印刷しちゃっていいですよとなりました。これが?
はい、校了です! これで企画、制作側の作業は終了です。おつかれさまでしたー。


そうだね。このあとのDM発送までは印刷会社とメーリング会社のお仕事になるんだね。
やった―! 課長、おつかれさまでしたー。 お昼ご飯へいきましょう。


ちょっと待った。モモちゃんはどこの会社の人だっけ?
アド通ですが、何か?


何か? じゃなくて……まだお仕事があるでしょ。
ですよねー。テヘペロ。


校了した後には何があるのかな。
はい。まず下版です。校了して完成した製版フィルムを刷版に焼きつけて印刷用のハンコをつくります。


そうだね。それが済んだら、次はいよいよ印刷だね。ここで注意する点は?
え? なにかありましたっけ?


いや、特にありません。印刷完了までは専門スタッフにお任せしよう。テヘペロ!
今回はボケツッコミが少ないので、もう一回、テヘペロ!

そして印刷機で用紙に印刷して、断裁して、折り加工する工程へと進みます。めでたしめでたし!
さあ、課長、お昼ご飯へ行きましょう! 時間を進めてください。さあ、さあ!
さあ、課長、お昼ご飯へ行きましょう! 時間を進めてください。さあ、さあ!


モモちゃんの頭の中はご飯でいっぱいだね。大丈夫かな。
全部ご飯じゃありませんよー。


ちょっとちょっと。まだ大事な仕事が残ってるよねー?
もう印刷終わりですしー。もしかして、ご飯を食べることですか?


やっぱりご飯でいっぱいじゃないですかー。喝ーーーっつ!!
ありがとうございます。


さあ、忘れていることを思い出してください。なんだい? さあ、さあ!
えー? ご飯じゃないとすると……何でしょう?


これでDMが届くと思ったら大間違いでしょ。封入と宛名印字と発送がありますよー。 ということで、次回へつづく。